【第32回】トラウマと神経の記憶 ―「昔のこと」が今の体に影響する理由とは?

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「もう昔のこと」と思っていても、体が反応してしまう…

「もう忘れたと思っていたのに、ふとした瞬間に胸が苦しくなる」
「ただ名前を聞いただけなのに、全身が緊張してしまう」
「過去のことだと頭では分かっていても、涙があふれてくる」

——そんな経験はありませんか?

それは決して「気のせい」ではありません。
私たちの体は、感情や出来事を“神経の反応”として記憶しており、無意識のうちに再生しているのです。

トラウマは「心の問題」だけじゃない

「トラウマ」と聞くと、心の深い傷や精神的なショックを想像する方が多いかもしれません。
確かにそれも正しいのですが、近年の神経科学では、トラウマは神経系のパターン記憶としても捉えられています。

たとえば——

  • 昔、怒鳴られたときに感じた「首がすくむ」感覚
  • 子どもの頃に怪我をした場所が、今でもこわばる
  • 緊張すると呼吸が浅くなり、頭が締めつけられる

これらは、過去の体験が「体の記憶」として残り、神経系が再び同じ反応を繰り返している状態です。
つまり、トラウマは「心と体」両方に刻まれ、今の健康状態にも影響を与えているのです。

神経可塑性とは?— 神経は“学習し、変化する”

では、なぜ体がそのような反応を覚えているのでしょうか?

そのカギとなるのが、「神経可塑性(しんけいかそせい)」という仕組みです。
神経可塑性とは、神経回路が刺激によって変化・再構築される性質のこと。

たとえば、恐怖を感じたときに体が緊張した経験が何度も繰り返されると、その反応が「回路」として強化されていきます。
脳は「これがこの状況での反応だ」と覚え、次から同じような状況で自動的に反応してしまうのです。

この「自動反応」は、命を守る防御反応としては有効ですが、
日常生活では逆に頭痛・不眠・消化不良・息苦しさなどの不調の原因になることもあります。

感情と神経の記憶がつながっている理由

私たちの感情は、大脳辺縁系(とくに扁桃体)で処理されます。
ここは「危険」や「安心」を判断する脳の中枢であり、自律神経やホルモンの反応と密接につながっています

特に関係が深いのが「迷走神経(副交感神経)」です。
この神経は、脳幹から内臓・喉・心臓・消化器などにまで枝分かれしており、感情の変化に敏感に反応します。

  • 悲しいと喉が詰まる
  • 怒ると胃がキリキリ痛む
  • 怖いと心臓がドキドキする

これらは、感情→神経→身体反応というルートが働いているから起きる自然な現象です。

つまり、感情の記憶は神経を介して「体に残る」ということ。
そして、それが“解消されないまま”蓄積されていくと、慢性的な緊張や頭痛、不安感となって表面化してくるのです。

やさしく整えることで、記憶パターンは変わる

私たちが行っている「頚椎×硬膜リセット」では、頚椎2番(C2)の支え圧によって、脳幹周囲の硬膜の緊張をゆるめることで、
神経系全体が深く整っていく反応を促しています。

このアプローチは、力を加えるのではなく、「支える」という極めてやさしい手法。
その静かな刺激が神経系に“安心”を伝え、交感神経の過活動を鎮め、全身が少しずつ落ち着いていくのです。

ゆるんだ先に現れる、感情と記憶の解放

そして、こうした硬膜の緊張がゆるみ、神経系が落ち着いてくると、
それまで抑えていた感情や記憶が自然に浮かび上がってくる
ことがあります。

このとき現れる反応のひとつが、「SER(体性感情解放)」です。

  • 理由もなく涙があふれる
  • 忘れていた記憶の断片がよみがえる
  • 呼吸が深くなり、体が震えるようにゆるむ

SERは、施術によって“起こすもの”ではなく、体が自ら安心を感じたときに“自然に起こる現象”です。
決して無理をせず、コントロールしようとしないことが、むしろ大切なのです。

まとめ:体が覚えていた「過去」も、やさしくほどけていく

トラウマとは、「昔の出来事」ではなく、
今この瞬間も、神経系に影響を与え続けている“反応の記憶”とも言えます。

けれども、神経には「可塑性=変わる力」があります。

だからこそ、
強制的に変えるのではなく、
やさしく共鳴し、安全を感じる空間の中で、
ゆるやかに、静かに書き換えていくケアが必要なのです。

あなたの体が握りしめていた「記憶」が、
少しずつほどけていく瞬間に寄り添えたら——
それが、私たちの願いです。

次回予告

次回は、さらに自律神経にフォーカスを当て、
「自律神経は“こころの翻訳者”」というテーマで、
感情と体の反応のつながりを、もう少し深く見ていきます。

「なぜ緊張するとお腹が痛くなるのか?」
「なぜ悲しいと喉が詰まるのか?」

その理由がわかると、今の自分の状態に気づけるようになり、
ケアの糸口も、自然に見えてきます。

どうぞお楽しみに。

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「もう忘れたはずなのに…」
その違和感や緊張には、あなたの“神経の記憶”が反応しているのかもしれません。

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この記事を書いた人

頭痛専門 ふうが整体院 頭痛セラピスト
Holistic life Labo UPA-LA セラピスト ヒーラー

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